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甲骨文字のセミ
(周尭「中国昆虫学史」1980に加筆)
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中国の殷代(BC.1766-1122)の甲骨文字の中にセミの象形文字がある(図)。「單(単)」の原形で、後年虫偏が付いて「蝉」になった。そして紀元前後の漢代には、
死者の口に玉製のセミを含ませて魂の抜けるのを防ぐ「含蝉」の習俗が王侯貴族に流行した。セミの羽化の姿に来世への祈りを託したのであろう。こうした背景から、
中国を歩くと新旧の玉製のセミによく出会う。3点のうち上2点は100〜200年前の清代のもので、時代証明書兼持出し許可証の封ろうのラベルがついている(写真には写っていない)。
中国ではそれ以前の文化遺産は国外持出禁止であるが、下の偏平のものは数年前クアラルンプールで求めた600年前の明代のものである。もっとも玉の年代鑑別は難しく、
真偽のほどは不明。含蝉の習俗も今はなく、玉蝉の現代の用途は装身具である。せめてぼくがみまかった時には、この習俗を復活させようかと、ひそかに考えている。
大きさは一番上の玉蝉で体長50mm。
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