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1992年12月、昆虫産業の現状視察でヨーロッパ各国を歴訪した際、ついでに虫のオブジェの調査も怠りなく努めた。
しかし、「蝉」の多いフランスに行かなかったためもあるが、虫に無関心な土地柄ゆえ、採集能力に優れたぼくをもってしても結果は予想通りの不作であった。
このハサミムシはその乏しい収穫のうちの白眉の1点である。
採集地はロンドンの由緒正しい大英自然史博物館の売店で、まるでぼくと会うのを待っていた風情でホコリをかぶり、棚の隅にころがっていた。
おそらく展示用に作られた模型の余剰品と思われる。鋼板製で体長23cm。リアルな美しい仕上げだが、見えない腹面側は、
「これぞハンドメイド」といわんばかりにハンダでゴテゴテに溶接してある。しばし逡巡したほどそれなりに高価であった。
なお、酒井清六氏の同定によると、モデルの種は、広い分布域を持つヨーロッパクギヌキハサミムシForficula auricularia とのことである。
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