竹細工の昆虫図鑑

　高知の竹細工師・西村竹創齋氏の作品で、氏はしばらく前からすっかり虫創りに凝り、その精巧な作品はしばしばマスコミでも紹介されるようになった。 ぼくは1991年の秋、水戸のデパートで開催された高知物産展で氏にお会いし、虫談義の結果、７点ほどの作品を破格の廉価で譲り受けた。 すべて生きた虫をモデルに当時すでに200種を越える虫を制作し、その作品群はまさに「昆虫図鑑」を見る思いであった。特に翅の質感をどう出すかに苦労した結果、 竹の内側の薄皮を剥し、極微の竹ヒゴを貼って翅脈にする独自の手法を開発した。おそらく数ある日本の竹細工の虫の中でも、質量ともに最右翼に位置する作品であろう。 全国にファンが多く、制作が間に合わない状態とのことである。先日、東京のさる高知物産展で偶然氏と再会したが、最近は顧客から彩色しない白木の虫の要望が多い由である。 トンボの開張9cm、クワガタの体長7.5cm。カマキリは胸部と前脚の環節が自在に動き、制作に３日間を要するという。