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ゾウゲヤシの虫たち

(香 港)

 蝉の方は1993年の冬、香港の骨董街ハリウッド通りで採集した。象牙細工を思わせるが、材質は“タグア・ナッツ”と呼ばれるヤシの実であることが添付の説明書でわかった。また「この貴重な香港の伝統手工芸品を買えばアフリカゾウの保護にも役立つ」と宣伝も象牙がらみである。

 調べたところ、これは南米原産のゾウゲヤシ Phytelephas macrocarpa (英名 vegetable ivory)の種子で、色が白くて緻密で固く、欧米では昔から象牙の代用品として、チェスの駒やボタンや装飾品の材料に利用されてきたらしい。

 それから2年後、日本は高知城下の有名な日曜市で、図らずももうひとつのゾウゲヤシの虫と遭遇した。コガネムシの方がそれで、これもたぶん香港製と思われる。

 ともに腹面側まで克明に細工してあり、改めて中国の伝統工芸技術のキメのこまかさに感嘆させられる。蝉の体長43mm、コガネムシ36mm。いずれも頭部の腹面側にひもを通すための穴があり、用途はペンダントと思われる。



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