銅細工のカマキリ
(ジンバブエ)
1985年夏、東京農大の河合省三氏のジンバブエみやげ。この国は1964年に英国の支配から独立した旧南ローデシアで、銅の主産地のひとつとして知られる。
首都ハラレのみやげ物店では、多様な銅細工の動物が売られていたが、虫はこれらのカマキリだけでだった由である。構造は単純ながら造形は実に見事である。
体長は80〜85mmとほぼ実物大。
アフリカはアニミズムの世界で、多くの自然物には精霊が宿り、複雑に錯綜した人種のそれぞれに無数の神話や民話がある。とくにカマキリは形やしぐさが人間を連想させ、 カマキリ文化圏と呼べるほど関連の神話や民話が多い。ジンバブエの国民の70%を占めるバントゥー族にも、カマキリを祖神とする神話があり、昔はこの虫が小屋に入ってくると、 先祖の神が子孫を訪ねて来たと丁重に扱ったという。数多い昆虫の中から銅細工のモチーフとして唯一カマキリが選ばれたのも、こうした背景によるものであろう。 アフリカの大地にこんなすてきなオブジェを生んでくれた精霊たちと、忘れずにぼくの分まで採集してくれた河合氏に感謝したい。 |
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