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蝉型の小袋

(日 本)

 左の色っぽい方は匂い袋で、1986年秋に上野の骨董店で発見した。色っぽいはずで、店主によると「もと神楽坂で芸者をしていた知合いの老女の作品で、 作り方は秋田の母親から習ったらしい」とのことである。また「これしか残っていないが、高い買い物をしてくれた子連れ客にあげるもので売り物ではない」という。 ぼくはそのどちらにも該当しなかったが無理に譲り受けた。縮緬製で体長10cm。ていねいな作りで後翅もつけてある。

 ところが最近、友人の小林準治氏(手塚プロ)がこれを見て、氏の真理子夫人も大小さまざまな同じものを作るといい、早速頂いたのが右の作品で用途はタバコ入れの由。 体長13cm。細部の作りには差異があるものの同工異曲の作品である。作り方は夫人の友人伝来とのことであるが、その後ある手芸の本にも作り方が出ていることを知った。 微妙に分化しつつ日本女性に引き継がれてきた伝統的な民芸品かも知れない。ぜひ子孫にも継承されることを念じたい。小林夫人ありがとう。



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