右上のコオロギの方は1987年の夏、虫仲間の桐谷圭治氏のソウルみやげ。ネジ山がむき出しになっているなどキメは粗いが、
こんな売れそうもないオブジェを作った無名作者の勇気は評価したい。短翅でメスの翅脈を持つが、産卵管を欠き、性別不明。体長10cm。重量200g。
左のバッタの方は1991年の夏、ハワイはワイキキの土産物店で発見した現物限りのオブジェ。売り子の話ではこれも韓国製の由であった。ムクの黄銅で重量感があり、
細工も形も立派なバッタである。体長15cm、重量500g。韓国には黄銅(真鍮)製品が多い。それは儒教の祭具から食器、装飾品に及び、他ではあまり聞かない人間国宝的な真鍮工芸家までいる。
それでもさすがに「虫」の作品は珍しい。
ぼくはソウルで生まれて幼年期をこの地で過ごした。先年60年ぶりに再訪し、短時間ながら黄銅の虫を探したが徒労に終わった。すでに消滅したのではないかと気になっている。
余談だが、かつて「いつ帰化しましたか」と聞かれたのがショックで、最近は履歴も「東京育ち」でごまかし、なるべく出生地には触れないようにしている。
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