1993年の冬、初めて北京の瑠璃廠を歩いたとき、泥と針金で作って彩色した実物大の多様な虫を路上に並べて売っている老婆がいた。1個4元(当時約60円)というのを、
悪い癖でかわいそうに3元に値切って全部買い取り、老婆はその日の商売が終わった。惜しむらくは細工の稚拙さであったが、その後瑠璃廠で写実性も細工も価格も1ランク上の作品に何度か出会った。
今回のものはその一部で、実に良くできていて、いずれも実物をモデルに作ったものに違いない。顧客が多いはずがないこうした虫が作られた動機は不明だが、店の話では、
この中には餅で作ったものも混ざっているという。それで思い出したのが、かつて正月に子供たちが遊んだという台湾の餅の虫たち(本シリーズNo.4参照)である。
あるいはこれと由来が同じなのかも知れない。体長はアリとオオダイコクコガネ45mm、カメムシ50mm。この他にもバッタ・コオロギ・カマキリ・ハチ・甲虫類などの豊富な種類がある。
ただし、できのいいものは(たぶんぼくが買占めてしまったため)、最近は瑠璃廠でもほとんど見かけなくなった。
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