Vol.4 No.3 【特 集】 第16回民間部門研究開発功績者表彰受賞者の業績 |
遺伝子組換えカイコを用いたヒト及び動物の診断薬の開発 | ||||
ニットーボーメディカル株式会社 山下 隼・寺田 崇 | ||||
これまで,体外診断用医薬品の標準品原料は,主に生体試料から作製されてきた。生体試料から標準品を作成する場合,原料として安定的に調達することが難しい場合があり,さらに倫理的に考えなければならない側面があった。近年,遺伝子組換え技術の発達により,標準品の主原料のタンパク質は,組換えタンパク質へ置き換えることが可能となってきた。そこで我が社は2003年より,農業生物資源研究所が開発した遺伝子組換えカイコを用いたタンパク質発現系を技術導入し,体外診断用医薬品原料の開発を開始した。その結果,ヒト骨代謝マーカー,イヌ炎症マーカーの標準品原料の開発,さらにモノクローナル抗体の作製にも成功した。 (キーワード:組換えカイコ,絹糸腺,体外診断用医薬品,標準品,測定キット) |
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マハタのウイルス病ワクチンの開発 | ||||
日生研株式会社 黒田 丹 | ||||
マハタは既存養殖魚に比べて高単価で取引され,期待のかかる次世代の高級養殖魚である。しかし,致死率が高いウイルス性神経壊死症(VNN)に対する有効な治療や予防手段がなく,養殖業者や行政から本病に対するワクチンの開発が強く求められていた。本病は新しいウイルス感染症であったことから,ワクチン開発に必要な基礎的知見を蓄積する必要があった。各種試験において有効性および安全性を確認するとともに製造方法を確立し,2012年1月に農林水産省から水産用医薬品として認可を受け,世界で初めて本病に対するワクチンの実用化に成功した。本ワクチンはマハタ養殖の疾病被害を軽減し,持続的な安定生産に貢献した。 (キーワード:マハタ,ワクチン,ウイルス性神経壊死症,VNN,オーシャンテクト) |
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切り花リンドウの新品種開発と普及 | ||||
有限会社スカイブルー・セト 瀬戸 堯穂・瀬戸 啓一郎 | ||||
切花リンドウにおいて,新規性のある一代雑種品種,栄養系品種を多数育成し,さらに世界で初めて3倍体品種を育成した。3倍体品種は2倍体品種に比べ花が大きく,茎葉のバランスが良く鑑賞性に優れている。仏花としてのイメージが強かった切花リンドウの用途を広げることに貢献した。また,結実しにくいため日持ちが良いだけでなく,交配に利用できないため,今後の海外輸出において懸念される,品種の保護にも有用である。これらの育成種はプラグ苗として商品化し,全国の生産者に供給し普及に努めている。 (キーワード:リンドウ,育種,倍数体,プラグ苗) |
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簡単に施工できる穿孔暗渠機「カットドレーン」の開発 | ||||
株式会社 北海コーキ 後藤 幸輝 | ||||
暗渠と同様の排水効果があり,農家自らが簡単に施工できる排水改良技術である穿孔暗渠機「カットドレーン」は,管路や疎水材を用いることなく,トラクターに施工ユニットを装着し走行して土に挿入するだけで,暗渠と同じ70cmまでの任意の深度に10cm四方の大きな通水空洞を作ることができる。この空洞の成形方法は,従来の弾丸暗渠と異なり,土を四角形のブロックに切って動かすことで空洞が確保されることから,これまでにない独創的な新しい方法である。カットドレーンは,土を切断する点と溝の横側に空洞を成形する点により空洞の崩落を防ぎ,施工に適する泥炭土や重粘土において3〜5年の耐用年数がある。 (キーワード:穿孔暗渠,カットドレーン,トラクター,無資材,適用条件) |
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牧草サイレージ不良発酵原因の解明とサイレージ用乳酸菌の開発 | ||||
雪印種苗株式会社 北村 亨 | ||||
北海道の牧草サイレージにおける不良発酵の原因が,草地の植生の悪化と堆厩肥などの過剰施用であることを明らかにした。植生悪化の原因となっているシバムギやリードカナリーグラスなどの雑草は,堆厩肥などを過剰に施肥するとサイレージのpHが下がりにくくなり,発酵品質が悪くなる。このように不良発酵の原因でもあり,北海道の草地に増加しているこれら雑草に対しても効果がある乳酸菌を開発するため,国内の牧草やサイレージから分離した1,000株以上の乳酸菌の中から,ラクトコッカス・ラクティスSBS0001株とラクトバチルス・パラカゼイSBS0003株を選抜し,「サイマスター」という商品名で発売した。 (キーワード:牧草サイレージ,シバムギ,リードカナリーグラス,乳酸菌) |
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森林資源を利用したフルボ酸量産化技術の開発 | ||||
国土防災技術株式会社 田中 賢治・森 千夏 | ||||
植物活性剤,化粧品原料等に利用されるフルボ酸は,日本の森林土壌中に含まれる有用な有機酸であるが土壌中に微量しか含まれないことから,これらの用途に利用するため有限資源として海外から採掘されたものを輸入して国内で利用されてきた経緯がある。こうした状況の中,間伐によって産出される木質チップと木炭等の生産過程で産出される有機酸を利用することによって有機酸の縮合・重合を促し,人工的にフルボ酸を高純度で量産化できる画期的な技術を開発した。 (キーワード:フルボ酸,有機酸,フューミン,腐植,土壌) |
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スターチス・シネンシス「キノシリーズ」の品種開発と普及 | ||||
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スターチス・シネンシスはガクがスプレー状に展開するフィラフラワーとして有用な品目であり,近年生産が増加している。従来品種は開花に必要な低温要求量が高いため,秋に定植し自然の低温に遭遇させて6〜7月に採花していた。この作型では開花期の集中が問題となっていたため選抜方法を改良して低温要求量が少ない「キノブラン」を育成した。その結果,春定植が主流になり,開花時期の調整が可能になった。「キノブラン」を端緒として改良を進め,極めて低温要求量が低い品種群の「キノシリーズ」を育成した。苗を低温処理することにより冬春期の採花が可能になり,スターチス・シネンシスの安定的な周年供給体制の確立に寄与した。 (キーワード:スターチス・シネンシス,切り花,低温要求量,品種育成,周年供給) |
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「グロリオサ」新品種開発と地域ブランドの確立 | ||||
農業自営 中島 義幸 | ||||
グロリオサはアフリカ及び熱帯アジアが原産のユリ科の球根植物である。その名前はラテン語の「gloriosus(栄光)」を意味し,華やかな見た目と鮮やかな赤色が特徴的な花である。中島氏は1980年以降,ハウス栽培での安定した周年出荷を目標に,優良系統の選抜・交配育種を行ってきた。流れゆく花き業界の中で市場性の高い品種を追究するに留まらず,栽培上の作業性・生産性の向上にも目を向け,地域農家と連携しながら,栽培技術・育種の開発に先進的に取り組み続けてきた。その高い意識と努力の結果,三里のグロリオサを代表する新品種の開発に成功し,国内シェア66%(2014年度実績)と日本一の産地を確立することができた。 (キーワード:グロリオサ,三里,サザンウィンド,ミサトレッド) |
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温泉水と温泉熱を用いた完全循環閉鎖型トラフグ養殖システムの開発 | ||||
株式会社 夢創造 野口 勝明 | ||||
近年,地球規模での環境変化による水産資源の減少,枯渇につながる乱獲,稚魚肥育養殖等について議論が高まっており,安全安心な食料を確保するためには環境変化に左右されない栽培漁業がますます重要となっている。こうした問題意識の下,海のない栃木県山間部において海水の代替となる温泉水「低塩分環境水」と「温泉熱」の活用により,閉鎖型の陸上循環養殖施設を用いて日本で初めてトラフグの一貫生産システムの開発に成功した。 (キーワード:地域資源,温泉水,温泉熱,海水類似,塩類細胞,トラフグ,町おこし) |
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厳冬期でも安定して高い消毒能力を発揮する車両消毒装置の開発 | ||||
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厳冬期における重大な被害を及ぼす伝染病が発生した場合の車両消毒装置が今までなかった。当社の技術や関係者の協力を結集して「厳冬期でも安定して高い消毒能力を発揮する車両消毒装置」を開発した。この装置は−30℃(−40℃でも対応可能)でも作動し,あらゆる環境化においても作動し的確な消毒効果を発揮するとともに自動センサーを導入することによって人や積載物の安全を確保している。この装置は環境に配慮しており,消毒にはクリーン・ファイン(無塩型電解次亜塩素酸生成器)から生成される,食品添加物として認められているクリーン・リフレ(無塩型電解次亜塩素酸水)を使用し,泥やグリスは独自のトラップで除去し,消毒薬を無害化できる当社の特許製品の浄化槽も設置できる装置となっている。 (キーワード:口蹄疫,鳥インフルエンザ,車両消毒装置,次亜塩素酸水,全自動) |
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