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野外から屋内への道

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 ゴキブリはゴキブリ目に属する昆虫の総称で、シロアリの仲間とは親戚筋に当たります。

ゴキブリの仲間は世界から約3700種も記録され、日本にも50種以上が分布しています。しかし、そのほとんどは人間の生活とは関係なく、 腐食などを食べて細ぼそと暮らしている野の虫で(図1〜3)、家の中の“おじゃま虫”になっているのはほんの一握りの種類だけです。

 日本でも知られている屋内性の種類はせいぜい10種たらずで、しかもそのうち、在来の種類は後述のヤマトゴキブリだけです。 他はみんな比較的近年に外国からやって来た侵入種です。

マダガスカル
オオゴキブリ

(図1)
サツマゴキブリ
(図2)
オガサワラゴキブリ
(図3)

 だから、これほどなじみの虫なのに、ゴキブリに由来することわざは「ゴキブリ亭主」のように近代のものしかありません。

 ゴキブリは原始的な昆虫で、現在と姿形が余り変わらないその化石が3億年以上も前の石炭紀後期の地層からいくつも発見されています(図4)。

 彼らから見れば人間とのつき合いは“ついきのう”始まったばかりです。が、その間、一部の種類は野外から人間の家屋に進出することに成功しました。
ゴキブリの化石
(図4)

 さらに、大航海時代に始まる交通機関の発達と、暖房設備の急速な完備は、彼らの世界への進出と、本来は生活できない寒冷地への定着を可能にしました。

 もちろん、野外とはあまりにも違う屋内に適応できた種類はわずかしかいません。しかし、この壁を乗り越え、“ただの虫”から“害虫”へと変身を遂げた瞬間から彼らには今日の繁栄が約束されていました。

 人間の住居、とりわけ台所は思いがけない安住の新天地でした。水と食物がなければ生活できない彼らに、台所はそれを生涯保証してくれました。強力な競争相手も天敵もほとんどいませんし、隠れ場所にも事欠きません。苦手の冬の寒さは暖房が守ってくれます。

 近代になってから家主が化学合成殺虫剤を連用し、この洗礼には困りましたが、それも多少の犠牲を払えば、強力な抵抗性を発達させるという、おそらくはゴキブリ自身も予期できなかった驚くべき能力で切り抜けました(図5)。
殺虫抵抗性
(図5)

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