第14回
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国産の有毒甲虫マメハンミョウ |
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マメハンミョウによるダイズの集団加害。最近ではこうした被害は珍しくなった。
(1985年8月、茨城県谷和原村で撮影)) |
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有毒種に間違えられた無毒のハンミョウ |
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中国の「斑猫(キオビゲンセイ)」
(1997年、昆明市の漢方薬店で購入、1匹約70円できわめて高価) |
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昆虫の中には強烈な毒を持つものがあり、それは人類に利用されてきました、たとえば、アフリカのブッシュマンは、
ヤドクハムシという有毒の甲虫の蛹をつぶして矢の先に塗って狩猟に使い、また、日本でも時代劇でおなじみの「斑猫の粉」
などは昆虫由来の毒薬として有名でした。
甲虫類のツチハンミョウ科の仲間は、成虫の体液に致死量がわずか30ミリグラムという猛毒のカンタリジンという物質を含有し、
それは洋の東西を問わず古来毒薬として利用されてきました。
本来の「斑猫の粉」の正体はその成虫の乾燥粉末です。中国産のそれはキオビゲンセイという種類で、
乾燥した成虫体に25%ものカンタリジンを含有しています。カンタリジンの用途は毒薬ばかりでなく、
おできのウミ出しの刺激発砲剤に多用されているほか、少量を内服(大変危険ですが)すれば催淫や利尿、
躁鬱病、性病、知覚麻痺などに効果があるとされています。
日本では江戸時代の初期に中国から渡来した「本草綱目」が原典となって漢方医学が発展しました。しかし当時、
これに出ていた「斑猫」の日本の種類への当てはめを間違え、山道などで人の歩く前へ前へと飛んで止まる習性から
「みちおしえ(道教え)」と呼ばれていた無毒の甲虫に「和(日本)の斑猫」の名を与えてしまったのです。
ですから大奥で若君の謀殺などに使われた「斑猫の粉」は、若君の栄養にこそなれ、これを使った謀殺はことごとく失敗したはずです。
それどころか現在でも名前からこの無毒のハンミョウを猛毒と信じている識者がたくさんいます。
日本にもカンタリジンの含有量がとりわけ多いツチハンミョウ科のマメハンミョウという種類がいて、
古くから体液に触れただけでもヤケド状の水ぶくれになることまでわかっていながら、これが毒薬として使われた形跡はありません。
マメハンミョウは成虫が大豆の葉を食べる害虫、幼虫がイナゴの卵をたべる益虫という奇妙な虫で、
のちにこの虫は発泡剤の原料としてカンタリスの名で「日本局方」にも登載されました。しかし、
近年はイナゴの激減からこの虫も少なくなり、発泡剤の原料はもっぱら中国から輸入した前記のキオビゲンセイが使われ、
最近では「局方」からもその名が削除されています。
その昔、悪相の御殿医や根性の悪い側室が若君の謀殺に正しくマメハンミョウの粉を使っていたら、
江戸時代の大名家の歴史は大きくかわっていたかも知れません。
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