第17回
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シロアリの羽アリ
(タイ国コンケーンの市場で購入)
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巣穴の上にカバーをかけるシロアリの羽アリのトラップ (西ケニア、エンザロ村、1998年3月、岸田袈裟氏撮影)
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エンザロ村のランチの例。左の皿が羽アリ料理、右の皿は主食のトウモロコシ(白)とソルガム(黒)料理
(1994年11月、八木繁實氏撮影)
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シロアリ類は原始的な昆虫で、アリの仲間ではなく、ゴキブリに近い仲間です。世界の熱帯〜温帯に2千種以上が分布し、
一般には建物の害虫として有名ですが、大部分の種類は人間生活とは関係の薄いただの”野の虫”です。熱帯には巨大な蟻塚を作り、
女王が数十年間も生き、1家族(コロニー)が数百万匹にも達する種類もあり、熱帯でのシロアリの現存体重は、高密度人口の国の人間に匹敵するとの推定もあります。
1960年代の後半、人類発祥の地アフリカで、チンパンジーが小枝や草の茎を道具に使い、蟻塚からシロアリを釣って食べる行動が観察されました。
膨大なバイオマスを誇るシロアリ類は、人類にとっても原初の食物のひとつと思われ、現在もそれを食べる習俗は、
熱帯圏を中心に世界の各地で見られます。
最近、虫仲間きってのアフリカ通の八木繁實さんが、西ケニアのエンザロ村で調査したシロアリ食の実態を報告しています。
シロアリは生殖シーズンになると、おびただしい数の羽アリ(王と女王)が出現して結婚飛行を行います。
この羽アリを「クンビクンビ」と称し、村のマーケットでは一包約30グラムが45シリング(約90円)で売られ、
首都ナイロビではその価格が4〜5倍に跳ね上がるそうです。村民は種類別に羽アリの出現期を熟知し、
とくに雨期に大量に発生する地中性のヒメキノコシロアリのシーズンには、巣穴をバナナの葉や毛布で覆った独特のトラップで、
村を挙げての羽アリ猟をするそうです。また、強制的に羽アリを巣から追い出すため、回りの地面を棒でたたいたり、
輪になって踊ったりするそうですが、これは羽アリに雨だれの音と同じ刺激を与えているのではないかという説もあります。
八木さんによれば、生食や軽くいためて塩味をつけたクンビクンビを中心に、乾燥品を併用し、
農家によってはシーズン中に全食事量の4分の1〜3分の1、総タンパク質の3分の1弱、
総脂肪の75%以上をこれで賄っているといいます。クンビクンビがいかに重要な食材になっているかがわかります。
シロアリの巣の奥深くには、寝たきりで産卵マシンと化した1匹の巨大な女王がいます。
シロアリの女王は中国では古来万病に効く高価薬とされ、アフリカでも最高の珍味とされています。
採集労力との見合いでめったに食べられませんが、八木さんたちはこれを試食する好運にも恵まれています。
香ばしくタラコに似てとても美味だったといいます。
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