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1989年のある春の日の夕方、事情があって公表できない東京のさる場所で、無類の虫好きで知られるフランス文学者の奥本大三郎氏とバッタリ会い、
そのまま深夜まで飲んだ。氏は専門と趣味の接点にあるファーブルの『昆虫記』の完訳に取り組んでいて、南仏にしばしば出かけている。
南仏といえばセミが好きな土地柄で、セミのオブジェも名物のひとつになっている。もちろん氏もそれをゴマンと所蔵し、この日の出会いは、
南仏の香りを振りまく“涙の出そうな”そのおすそ分けをぼくにもたらすこととなった。今回のものもそのひとつで、派手な布皿にセミ型の石鹸とポプリの袋が乗せてある。
全体がそこはかとなく色っぽいが、これぞ新婚旅行専用の石鹸セットである。残念ながら、ぼくが南仏に新婚旅行に出かけるチャンスは絶望的だが、
いつの日かこの地を訪ねてファーブルの旧跡をめぐり、セミ石鹸でたるんだ体を洗い、枕の下にポプリを入れていい夢を見たいというひそかな願望はある。
セミの体長10.5cm。
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