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ぼくは“描かれた虫”は集めていないが、今回は例外。これはオオムラサキの雄を一隅に染めた縮緬の風呂敷で、
東京帝国大学の著名な養蚕学者の佐々木忠次郎博士(1857〜1938)を記念し、亡くなられた翌年に門下生有志が三越に発注して作成したものである。
弟子のひとりであった亡父与七郎を経てぼくに残された。さすが日本の絹の染色技術は、半世紀以上経過した今日も褪色は全くない。学名の
Sasakia charonda の属名は博士に由来し、かつて蝶マニアであった(いまも多少そのケがあるが)ぼくは、昔この学名を“佐々木が転んだ”と覚えたものである。
説明書が添えられてあり、「博士の記念として誠に端麗な蝶と思ふ」と結んである。なお、オオムラサキは奇しくも佐々木博士の生誕百年に当たる1957年に、
日本昆虫学会によって“国蝶”に指定されている。門下生だけの記念品なのでおそらく制作配布数は少なく、ほとんどは現存していないと思われる。
オオムラサキは実物より一回り大きく、開張約11cm。
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