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“幸運のバッタ”のホチキス

(アメリカ)


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 この「幸運のバッタ(LUCKY GRASSHOPPER)」のホチキスは、長谷川仁氏が1989年に銀座で採集してぼくに下賜されたものである。 アメリカはオハイオ州のGeity社製。純金メッキの鉄製で、体長9cm。説明書(カット)によると、バッタのモデルは1742年にボストンのファナル会館の屋根に飾った風見バッタで、 風雪に耐えて今も同市の商売繁盛のシンボルになっているという。さらにそのルーツは、16世紀の英国の実業家トーマス・グレシャム氏が創設した、 ロンドン王立証券取引所の屋根に付けたそれにさかのぼる。

 「幸運」の由来は、1519年にロンドン郊外の野原で、バッタを追って遊んでいた若者たちが捨て子を発見し、その捨て子こそがグレシャム氏であったことによる。 若者たちにではなくバッタの方に感謝するあたりが、氏が実業家として大成したゆえんであろう。

 なお英国には短翅で大型のこんなバッタはいない。ぼくは先年ロンドンに旧証券取引所を訪ね、現在も屋根に残る風見バッタを薄暮の空に遠望したが、 そのバッタはホチキスのそれとは違って長翅であった。このバッタは大西洋を越えて新大陸で種が分化したらしい。



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