第4回
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国産の食用イナゴの大部分を占めている「コバネイナゴ」 |
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仙台平野産「イナゴのしぐれ煮」 |
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イナゴは日本で甘露煮や佃煮がスーパーでも売られている、ほぼ”全国区”の唯一の食用昆虫です。
その記録は平安時代にさかのぼり、かつては水田から集めて一般家庭でも調理していました。
戦後の強力な農薬の影響で急速に数が減りましたが、低毒性の農薬に切り替えたことで昭和50年代ころからふたたび水田で増えはじめました。
しかし、これを調理する主婦の方がいなくなり、食卓に上るのは商品化された製品だけですが、
需要はむしろ増えているようです。
また、水田の主なイナゴにはハネナガイナゴとコバネイナゴの二種があり、戦前までは両者が拮抗する勢力を誇っていました。
しかし、衰退の時期をはさんで復活したあとは、なぜかハネナガイナゴが少なくなり、ほとんどコバネイナゴになっているそうです。
もちろん、これを反映して佃煮の中身も変化しているわけですが、理由はよく分かっていません。ただ、
害虫防除というヒトの営みが生物の種間関係に劇的な影響を与えた一例であることには違いないでしょう。
食用イナゴの最大の産地は仙台平野で、ある集積所の記録では、1日10トンものイナゴが学童を中心に集められ、
1シーズン合計では100トンを超えるといいます。またこれでも間に合わず、韓国や中国からも輸入されています。
中国産はチュウゴクイナゴという別種ですので、日本人が食べるイナゴは少なくとも3種類が混ざっていることになります。
また、大まかな計算ですが、すべての日本人が少なくとも1年に平均数匹のイナゴを食べていることになります。
これが多いか少ないかはともかく、これが日本最大の食用昆虫の消費の実態です。
食べ方は甘露煮や佃煮がおなじみですが、ほかにイナゴの粉末をみそと混ぜて「いなご味噌」とする地方もあり、
またかつては、乾燥品や粉末が保存食としても利用されました。生体重の64%がタンパク質で、ミネラルも多く、
健康食品としてもお薦めです。
イナゴを好んで食べるのは日本ばかりではありません。イナゴ類とその親せき筋のバッタ類は、
世界的に食用昆虫の花形といえます。とくにアフリカでは飛蝗(サバクトビバッタの仲間)が時々大発生し、
移動しながらすべての農作物を食いつくし、しばしば深刻な飢饉を招いていますが、その一方で飢えを補っているのがバッタそのものです。
「聖書」ではいろいろな昆虫食を禁止していますが、バッタだけは別格で、食べてもよいものとしてこれを挙げています。
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