第5回
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竹象の塩漬け (タイワンオオオサゾウムシ成虫) |
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金蝉唐揚の緑葉盛り (スジアカクマゼミ幼虫) |
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蟻の巣帰り(上)とクロトゲアリ(下) |
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ご存じのように、中国はグルメの国として世界的に知られています。とにかく、
コウモリのふんから消化されない蚊の目玉を洗い出してスープにしてしまう国です。
もっとも、有名なこの話の真相は、蚊ではなく小エビの目玉だそうですが……。
ぼくはここ数年来、仕事でよく中国に出向いていますが、そのつど食虫習俗についても新しい発見があります。
数年前の秋、「食は広州から」といわれるその広州に滞在したとき、昆虫を食べさせる店があると聞いて早速出かけました。それは目抜き通りにある「東山酒家」
という大きな広東料理店で、昆虫料理はミミズやヒキガエルなどとともに特別メニューに並んでいました。
ここでぼくが試食した昆虫料理の一部と虫の生体や味の感想を紹介すれば次の通りです。
なお、値段は当時の日本円換算で、この店では特別に高価な料理でした。
椒塩桂花蝉(タイワンタガメの山椒塩漬け)……1匹で160円。タガメはとくにタイで好んで食用。
うまくもまずくもなくでした。
田園竹象(竹象虫の塩漬け)……約1ダースで120円。虫はタイワンオオオサゾウムシの成虫で、
幼虫は東南アジア各地で食べられていますが、成虫の食用例は初めてでした。固くて味よりも飲み込むのがやっとでした。
和味龍風(ゲンゴロウの薄味付け)……2種のゲンゴロウとガムシが混在。
約1ダースで160円。ゲンゴロウはアジアで広く食用にされ、昔日本でも「君候の食べ物」と珍重されたそうですが、
臭くてまずかったです。
緑叶金嬋(セミの幼虫の空揚げと野菜盛り)……日本にいないスジアカクマゼミの幼虫。
約10匹で400円。セミは古来からの中国の伝統的な食用昆虫。思ったよりも美味でした。
腰果錦綉炒蚕虫(蚕のサナギのカシューナッツいため)……蚕のサナギは日本を含む養蚕国では普遍的な食用昆虫。
一皿約50匹で340円。ぼくは戦争中に無理に食べさせられた思い出があり、個人的に嫌いな料理です。
蟻帰巣(アリの巣帰り)……麺を揚げて作ったバスケットに春雨の野菜あえを盛り、
油でいためた大量のアリをまぶした料理。アリは木の上に葉を綴って巣を作るクロトゲアリで、
土や砂が混じらずに大量に集めることができます。一皿で560円。
どれがアリ本体の味なのかわかりませんでした。
そのほか、おいしいサソリの空揚げなどいくつかの昆虫料理を試食しましたが、多くはぼくにとってなじめない味でした。
しかし、海に近く新鮮な魚が大量に消費されている広州に、こうした高価な昆虫料理が存在することは、
その味を歓迎する多くの人々がいる証拠です。慣れればおいしいのです……きっと。
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