第6回
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オオダイコクコガネの糞玉と内部の蛹. 東北タイ、ウドンターニ (写真=阪口進氏提供) |
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ツムギアリを売る露店. 東北タイ、コンケーン郊外 |
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コミツバチの巣. バンコク、サンデーマーケット |
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食虫トライアングル --- インドシナ内陸の食虫地帯 |
タイ北部からラオス、ミャンマーをつなぐ一帯の山岳地帯は少数民族の拠点で、
かつて有数の麻薬(ケシ)供給地としてゴールデントライアングル(黄金の三角地帯)の名で知られていました。
そして、この範囲を中国の雲南省まで北に広げると「食虫トライアングル」と呼べるほどアジア最大の食虫地帯に重なります。
海から遠く、畜産も発達しなかったこの地帯で、重要なタンパク資源として昆虫食が発達したのもうなずけます。
ここで恒常的に食べられている昆虫は百種に近く、1975年に東北タイの学生を対象に行った食虫のアンケートで、
90%以上の学生が食べていると回答した昆虫だけでもコガネムシ類、ゲンゴロウ、ミツバチ類、スズメバチ類、
ツムギアリなど八グループに及んでいます。
事実、北〜東北タイをを歩くと、村のマーケットや路上で実にさまざまな虫が食用として売られていて、
その”商品形態”も、生きたまま、蒸す、焼く、油いため、空揚げ、テンプラなど多様です。
中にはびっくりするような虫もあります。たとえばコガネムシ類はたいてい蒸して売っていますが、数種類が混ざり、
その中に獣糞を食べる種類まで発見されます。
さらにはオオダイコクコガネという大型の食糞性のコガネムシが水牛の糞で育児用に作ったテニスボール大の糞玉まで売られています。
これは割って中の蛹を食べますが、蛹は消化管に内容物が残っていないので、食品としては成虫よりも清潔で安全ですが……。
ツムギアリは前回紹介したクロトゲアリと同様に木の上に葉を綴って巣を作るアリです。
ぼくは以前これを買って村の食堂で料理してもらいましたが、出来上がったのは蟻酸の効いた大変酸っぱいスープでした。
さらにはコオロギ類(主としてタイワンオオコオロギ)も普及率85%のメジャーな食材です。
チェンマイのレストランでその油いため料理を食べましたが半分以上はケラが混ざっていました。
ミツバチ類は野生種のコミツバチの巣がバンコクのマーケットでも1個200円ほどで普通に売られています。
はちみつと幼虫や蛹を取り出して食べます。また外来のセイヨウミツバチもはちみつのほか幼虫や蛹がここでは食用に利用されています。
巣ごとホイル焼きにしたものを試食しましたが、さすがに巣はまずくて閉口しました。
いずれにしても、こうした虫はほとんどが野外から集めたもので、”売るほど”虫が多いことは日本と比べてそれだけ豊かな自然が保持されている証拠といえるでしょう。
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