第20回
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混入トラブルのナンバー・ワンのガ「ノシメマダラメイガ」
上:成虫、
下:幼虫(幼虫が各種穀類や、菓子、乾果などを食害する)
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混入トラブルの多い甲虫「コクヌストモドキ」
上:成虫、
下:幼虫(幼虫が穀粉や、ビスケットなどその加工食品を食害する)
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その昔、モモやナシを食べるとよくシンクイムシ類というガの幼虫が出てきましたが、当時は「熟れている証拠」と、
その部分だけよけて食べたものです。現在は防除や流通技術の発達で、果物でのこうした”事故”はほとんどなくなりました。
しかし、市販の食品にはいまでもよく虫やその破片が混入していて、食品メーカーにとっては死活を制するほどの大問題になっています。
それは、もともとその食品の害虫である場合がほとんどですが、どうして紛れ込んだのか理解に苦しむような種類もあり、
中には消費者が意図的に入れたケースまであるようです。
いずれにしても食品混入昆虫はメーカーにとって頭の痛い話ですが、これを完全に防ぐことはほとんど不可能といえます。
ただ微小な種類は、それと気づかずに一緒に食べてしまっているケースがほとんどです。たとえば各種のスパイスに発生したコナダニ類、
緑色野菜のアブラムシ類などなど……。差し障りがあり詳しくは述べませんが、虫がついていても食品の腐敗が原因でもない限り、
通常はタンパク源になりこそすれ、まず衛生上の心配はありません。
アメリカでは食品医薬局が混入昆虫の最大許容レベルを定めています。たとえば、ピーナッツバター100グラム当たり昆虫の断片50個まで。
カレー粉では25グラム当たり100個まで。缶詰トマトでは缶当たり果実を加害するミバエの卵5個とウジ1匹、ウジだけなら2匹まで……
といった具合です。これはビックリするほど甘い基準です。つまりアメリカでは、バターに目立つほどゴキブリの破片が入っていても、
ケチャップにいかに果実食の昆虫とはいえ、ウジが数匹入っていても消費者のクレームの対象にはならないのです。
なおアメリカ当局は、「このレベルは殺虫剤を多用すればもっと下げられるが、無害な自然物の混入を殺虫剤の混入に置き換えることは賢明ではない」
とまでいっています。なんとススンデいるではありませんか。もしこの基準を日本でも適用したら、大半の混入昆虫トラブルは解消することでしょう。
前述のように、すでにわれわれは知らずにたくさんの混入昆虫を食べているのです。発展途上国で餓死者が出ているこの時代に、
目についたわずかな混入昆虫のために、メーカーが全製品を回収・廃棄するようなバカなことがあってもいいものでしょうか。
まずは、無害な昆虫のカケラが一つや二つ入っていても気にしないことにしようではありませんか。
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