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第22回

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表
表:昆虫類のタンパク質と脂肪の含量の例


トノサマバッタの大群
写真1:鹿児島県馬毛島で大発生したトノサマバッタの大群
(1986年、田中章氏撮影)


エビガラスズメの大量増殖
写真2:合成人工飼料によるエビガラスズメの大量増殖

肉にまさる虫の栄養価



  現在、タンパク質の生産効率がもっとも高いのはブロイラーと言われています。しかし昆虫の中にはこれに匹敵するものがたくさんあり、 栄養的にも昆虫が有望な食糧資源であることはすでに証明されています。

 は昆虫類のタンパク質と脂肪含量の例を肉類と比較したものですが、このほか、必須アミノ酸類やビタミン類、 ミネラルなどについてのデータも昆虫類が肉類にまさるとも劣らない資源であることを物語っています。

 これまで紹介してきました昆虫食の例のほとんどは、野生のものを集めて食べるケースで、手法的には狩猟採集の時代と変わりはありません。 ときどき大発生するトビバッタ類のような種類(=写真1)では、この方法も一時的な飢えの救済のためには有効でしょう。

 しかし一般的に、野外からの採集だけに頼るのでは対象の昆虫を安定的に確保することが困難ですし、 いくら味が良くてもスズメバチ類のように組織的な大規模採集が続けば種の保全上の問題もあります。こうしてみると、 狩猟採集は昆虫の食用利用の手法としては王道とはいえません。

 食糧資源としての昆虫類のメリットは、栄養価はもちろん、増殖効率の高さと人為的にリサイクルが可能な点にあります。 こうした観点から、将来的に食糧資源として考えられる種類は安価な飼料による安定的な大量増殖が可能な種類ということになります。 近年は昆虫の栄養生理学的な研究が進み、多くの種類で人工飼料による大量増殖法が確立されています(=写真2)。

 ただ、今のところその目的は実験材料の確保や一部の天敵増殖などに限られ、食用としての観点からはまだコスト的にペイするには至っていません。 とくに、スズメバチ類のような肉食性昆虫の大量増殖は困難で、必然的に候補の種類はガの幼虫のような植食性の種類ということになります。

 一方、昆虫の姿形に対する歴史的な嫌悪感の問題もあります。現在もっとも可能性が高い昆虫の食用化として、 昆虫を家畜の餌に使う間接的な手法があります。

 ただこれについても、ウィスコンシン大学のデフォリアート教授(連載第9回参照)が、飼いやすいイエコオロギの養鶏飼料化を検討しましたが、 現行の配合飼料とコスト面で太刀打ちできなかったといいますので、経済的な昆虫の飼料化もそう簡単ではありません。

 ただこうした問題は、そう遠くない将来、日進月歩で進行している”技術”が解答を与えてくれることでしょう。