市販の包装食品にはよく虫やその破片が混入していて、メーカーへの消費者からの苦情が絶えない。食品混入昆虫は貯穀害虫などその食品を食う種類の場合は、
虫の発育段階等から、混入の時期を推定できる場合が多いが、食品とは無関係な虫の場合は、一般に混入ルートの探索は難しい。いずれにしても食品メーカーにとっては頭の痛い話で、
さまざまな防止対策を講じているが完全に防ぐことは不可能に近い。ただ、微小種の場合は消費者が気付かずに虫を一緒に食べているケースがほとんどであろう。
たとえばスパイスのコナダニ、緑色野菜のアブラムシなど……。差し障りがあるので詳しくは述べないが、虫が付いていても、通常はタンパク質が強化されこそすれ、
衛生上はまず心配ない。
アメリカでは食品医薬品局が混入昆虫の最大許容レベルを決めていて、三橋淳氏(1997)が一部を紹介しているが、それはビックリするほど甘い基準である。 たとえば、ピーナッツバターでは100g当たり昆虫断片50個、カレー粉では25g当たり断片100個まで。缶詰トマトでは100g中にミバエの卵5個とウジ1匹、ウジだけなら2匹まで。 ……といった具合である。 つまり、アメリカではバターに目立つほどのゴキブリの破片が混ざっていても、ケチャップに果実食とはいえウジ虫が数匹入っていても消費者のクレームの対象にならないらしい。 この基準を日本にも適用したら、大半の昆虫混入トラブルは解決しよう。 なお、アメリカ当局は、「このレベルは殺虫剤を多用すれば下げられるが、”欠陥はあっても無害な自然物”を”有害な殺虫剤の混入”に置き換えることは賢明ではない」と言っている。 なんとススンデルではないか! ぼくは最近、世界の食虫習俗の事例収集に少々凝っていて、昆虫こそは来るべき世界的なタンパク源の不足を救う素材であると信じている。おのおのがた、その時に備え、 食品にたかが虫のカケラが一つ二つ入っていても気にするのはやめようではないか。 [研究ジャーナル,22巻・8号(1999)] |
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