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トビバッタ

 トビバッタの仲間は、有志以来、人類最大の害虫として知られ、その記述は古く『聖書』の中にも見られる。大発生のときは“日もかげる”ほどの大群で移動し、 すべての緑を食いつくす。とくに、中国やアフリカでは、このバッタによる深刻な作物の被害が繰り返されてきた。

サバクトビバッタの撲滅宣伝切手
(仏領アファール・イッサ、
東アフリカ−現在のジブチ:1988)
 トビバッタの仲間にはいくつかの種類が含まれるが、いずれも密度が低いときは移動力も少なく、さしたる問題にはならない。しかし、ひとたび幼虫密度が高まり始めると、 成虫は色が黒ずみ、ハネが長くなり、強大な移動力を持つ大群に「変身」してゆく。

 最近では、このような変身に関与する化学物質や、その生理的作用の研究も進展しているが、それをバッタ対策に利用できるレベルにはまだ至っていない。

 そのトビバッタ類がここ数年来、アフリカで半世紀ぶりの超大発生を起こし、世界の注目を浴びている。好適な降雨条件に恵まれたほか、残効の長い土壌用の強力殺虫剤の規制もその一因と目されている。 が、いったんこうなった以上、いまのところ人為ではなすすべもない暴れようである。

 もっとも、アフリカの恒常的な飢餓地帯では、1平方km当たり4千万〜8千万個体に及ぶというこのバッタの大群の襲来を“食用”として歓迎、 あるいは心待ちしているという情報もあるが……。

[朝日新聞夕刊「変わる虫たち」,(1989.4.3)]



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