<本編について詳しくは別項の 『釣り餌の“商虫”列伝』 をご覧ください>
多くの淡水魚は虫を主食にしている。そのため、かつては釣具店でエサ用に多様な虫を売っていた。玉虫(イラガのマユ)、ブドウ虫(ブドウスカシバの幼虫)、 チシャ虫(ウシヅラヒゲナガゾウムシの幼虫)、クリムシ(クリシギゾウムシの幼虫)、赤虫(ユスリカの幼虫)、サシ(ハエのウジ)などなど。 もちろんこれらは野外から直接集められたものである。しかし近年は、主として人件費の関係から、その多くは、たとえ店頭で見かけても、ビックリするほどの高値がつけられている。
売られている釣り餌のいろいろ
そうした中で健在なのが「赤虫」と「サシ」で、これが昨今の渓流釣りのエサの主役を担っている。ただし、その素性は昔とは異なり、それぞれ“今様”に変わってきている。 まず、「赤虫」はユスリカ類の“赤いボウフラ”であるが、最近都市の河川で急増している同類のものはエサとして小さすぎ、売られている大型のものは、 もっぱら韓国からの輸入品であるらしい。 一方の「サシ」は、研究用に開発された人工飼料を利用し、大量に“養殖”されたイエバエのウジが主体で、清潔なことも昔との大きな変わり方である。 また昨今は、飼料に色素をまぜて作られたと思われる「赤いサシ」も用意され、対象の魚によって使い分けるというキメの細かさも見せている。
朝日新聞夕刊「変わる虫たち」,(1989.4.18)
|
もくじ 前 へ 次 へ