昆虫類は体が小さいことが特長で、大部分の種類が体長10mm以下の小型種で占められている。「ギネスブック」によると、
ある種の甲虫と寄生バチの一種の体長がともに0.2mmで「世界最小の昆虫」である。また、後者の体重は0.005mgで「最も軽い」とある。
実に20万匹で1円玉と同じ1gの重さである。
最近は、昆虫の形態や運動機能が、小型ロボットやマイクロマシンの絶好のモデルとして工学の分野でも注目されている。しかし、物体には寸法効果があり、 長さを2分の1に縮小すると体積では8分の1になる。ジャンボ航空機を小さくしても、表面積と体積とのバランスが変わって摩擦が大きくなり、 簡単には飛ばすことができない。だから、微少昆虫をまねて、飛翔や歩行行動を人為的に制御できるロボットを開発するのは、火星に行くよりも難しい技術になろう。 こうしてみると、どんなに小さい昆虫でも生存のための複雑で高度な機能をすべて備え、地史的な年月を代々生き抜いてきたのはまさに驚異といえる。 近年は昆虫類のさまざまな機能の産業的利用研究が活発化しているが、それはまだ”氷山の一角”に過ぎない。依然として昆虫たちはナゾに包まれた”不思議の国の妖精たち”であることには変わりないのだ。 [研究ジャーナル,23巻・11号(2000)] |
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