まず、体面積では、翅の大きなチョウ目昆虫が上位を独占する。「ギネス」によれば、ニューギニア産ヘルクレスサンの開帳(広げた翅の両端の長さ)が28cm、 翅の面積が263cm2で「世界最大」とある。また、八重山諸島にも分布する同属のヨナクニサンもやや小ぶりながら、国産昆虫ではこれが群を抜いて体面積の第1位である。 体長の上位はナナフシ類で占められる。「ギネス」には、大英博物館蔵のボルネオ産オオナナフシの体長23.8cmが世界一とある。国産では、 奄美大島産アマミナナフシのメスの体長15.9cmが現在体長の最大記録である。もっとも、この仲間は英名で「歩く小枝(walkingsticks)」といわれるようにチョロ長く、 体重では軽量級である。 その体重では重戦車のようなコガネムシ類の独壇場で、アフリカ産ゴライアスツノハナムグリ類の100g以上もあるオスがヘビー級チャンピオンである。 前項の最小の虫との体重差は実に5千万倍になる。国産ではカブトムシが長らく重量級の王座にあったが、1983年に沖縄で発見され、 話題を呼んだヤンバルテナガコガネにその座を譲った。 近年、昆虫の脱皮や変態に関与するホルモンを操作して虫体や繭を大型化する技術がカイコで開発されている。ただ、皮膚が筋肉を支える外骨格の昆虫類では、 人為的操作で大型化しても限度がある。放射能で巨大化したアリが人間を襲うSF映画も虫の構造上実際にはあり得ない。しかし、3億2千万前の上部石灰紀には、 開帳が75cmもあるオオトンボ目の昆虫が実在していた。生物工学技術の発展もあり、この程度までは将来”創れる”可能性がある。遠くないいつの日か、 子犬ほど大きいカブトムシを連れて散歩する時代が来るかも知れない。 [研究ジャーナル,23巻・11号(2000)] |
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