写真提供:滋賀県山東町
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ゲンジボタル(ホタル科)はわが国最大のホタルで、本州・四国・九州に広く分布する。
滋賀県と岐阜県の県境に近く、北の伊吹山と南の霊仙山から流れ出る天野川が弥高川と合流する地点の上流91mから下流1,091mまでが指定地域で、
成虫の体長が2cmにもなる大型のゲンジボタルが生息する。
もともと天野川は、カルシウム質の水量豊富な清流で、ホタルの幼虫の餌になるカワニナの繁殖に適しているうえ、水草が繁茂し、河川の構造もホタルの生息に適した環境となっている。
かつて、その発生最盛期には川面が明るくなるほど群舞し、大正末期から青年会が中心となってゲンジボタルを守る運動など保護への取り組みが行われるなかで、
観光の名所にもなっていた。しかし、第二次大戦中はそのホタルが空襲の目印になるとされ、保護活動や観光は中断された。
戦後再び保護活動が盛んになったものの、昭和30年代になって工場排水や農薬の影響でカワニナやホタルの幼虫が減少していたところへ、
34年(1959)の伊勢湾台風による天野川の氾濫でホタルの巣が根こそぎ洗い流された。そのうえ、39年(1964)に完了した復旧改良工事で護岸や河床が大きく変わってしまい、
ホタルは絶滅寸前の危機に陥った。
こうした状況から、「天野川ゲンジボタルを守る会」を中心とする運動が起こる一方、44年(1969)には「飼育池」が造られて増殖への取り組みが始まり、
47年(1972)「山東町蛍保護条例」が制定されるに至った。その結果、50年(1975)ころから美しい光景がよみがえってきた。58年(1983)には「ゲンジボタル保護研究施設」が整備され、
研究にも力が注がれることになった。
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