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アポイ岳(標高810m)は、日高山脈の南端、襟裳岬に近い西海岸寄りにある。
日本列島は氷河期にサハリン・千島列島・朝鮮半島と陸続きであったため、北方系の植物が南下していて、気候が温暖になったときその一部がアポイ岳一帯に取り残され、
長い歳月を経て適応した。
指定地域は、アポイ岳の五合目(350m)付近から山頂までの登山道周辺と、山頂部分を中心として北稜沿いのピンネシリ(958m)から南稜沿いに延長7kmの南北にほぼ細長い範囲を合わせた359.9haで道有林。
海岸からわずか4kmにあるこの山では、夏に発生する海からの濃霧が日光を遮つて気温を低下させる一方、冬は太平洋側の気候で積雪量が少なく、低い山にしては地温が下がるため、
2,000m級の高山と同じような気象条件になる。
また、この一帯は「幌満(ほろまん)かんらん岩体」という特殊な地質からできていて、岩石の風化が遅いうえ、風化してできた土壌は風雨で移動しやすく堆積しにくい。
道内の山では1,000m以上でないとハイマツ帯、つまり高山植生帯が出現せず、800m前後の山であればエゾマツ・トドマツ林になるのが普通だが、アポイ岳では五合目から高山植物が、
場所によっては300mくらいからハイマツ群落が現れる。
これは、寒冷な気候と貧弱な土壌のため、高木が育ちにくく通常の植生にはならないからで、とくに500m付近の馬の背から頂上に至る西尾根に高山植物群落が見られる。
そこを中心に、ヒダカソウ・エゾコウゾリナ・エゾイヌノヒゲ・アポイアザミ・アポイカンバ・サマニオトギリなど固有種や多くの固有変種を含め、80種類以上の貴重な植物が確認されている。
そして、山麓から広葉樹林帯、針葉樹林帯、ダケカンバ帯、ハイマツ帯と移り変わっていくはずのところが、九合目から頂上にかけてハイマツ帯からダケカンバ帯に逆戻りしている。
強風の影響が弱まっているためなどとされるが、下草にスズラン・ミヤマエンレイソウなどの山麓部の植物を伴っていて、謎が深い。
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